大塚家具の中期経営計画を読んでみる
大塚家具のお家騒動が話題です。一般に創業時の成功体験に固執する父と、一橋大卒でエリートコースを辿りビジネスモデルの転換を図る長女という構図になっており、世間の評判では長女有利なようです。
どちらかといえば私も長女の久美子さんを支持したい気持ちですが、創業者の「ニトリ、IKEAをマネしてはダメ」というのも一定の説得力があります。大塚家具が高級路線で売れないにしても、低価格路線にはサプライチェーンの効率化、オペレーションの優位性などが必要になり、マネしたところで利益が出るわけではありません。
というわけで、せっかくなので現社長(長女)が発表した中期経営計画を読んでみます。
ビジョン
ということは、家具だけではなく屋内の改善・改良といった領域にもある程度進出したいのでしょうか。
市場やライフスタイルの変化
住宅ストックの充実
不動産業界・リフォーム業界などでは必ず見る資料ですが、ストックが充実して新築需要が低下しているという話です。 ただしこの点についてはストックが充実し新築が減少したところで、中古マンションのリノベーションが増えているので空箱がなくなりまとめ買いが減るという論拠としては少し違うように感じます。どちらかというと少子高齢化や若手世代の購買力低下を考えれば中年以降の世代ですでにそれなりの家具を揃えている人を相手に商売したほうがやりやすいってことが言いたいんじゃないでしょうか。
価格帯軸の業界動向
で、これはIKEA・ニトリ参入前後でユーザの入り口が変わってしまったという話。大塚家具の生産体制がどうかは知らないけど、海外の生産工場とか使って効率化されて低価格路線で勝負できるIKEA・ニトリができるととりあえず消費財としてそっちで買い物するようになるから、ユーザの入り口をIKEA・ニトリにとられては家具が売れない。
戦略・施策
で、ここでいよいよ戦略ですが
- 既存店を入りやすくする
- 新規出店
- 百貨店のようなすでにユーザを握っているところと提携してカタログなどの販売を増やす
- 営業販売の強化
ということらしい。
1と3はわかりやすいので省略。
新規出店
出店は普通の出店もありますが少し趣向を凝らした出店を行うということらしい。ありがちな判断な気がしますが、いくつか別ブランドを走らせていくことと、家具の中でも比較的低価格帯の商品に特価することで新規顧客開拓を行いたいというような狙いを感じます。とくに睡眠のやつとか。
営業強化
高齢者住宅というのは老人ホームのことです。最初そのへんの家にセールスするのかと思いましたが。
老舗ブランド使って売上取れそうなところは取りこぼさないということでしょうか。
その他
あとは自社の強みや株主還元、経営陣の強化の話でおもしろくなかったのでカットしました。(こっちはニュースで話題になってるし)
感想
中期経営計画としては内容が壮大すぎず付け焼き刃でもない、説得力があるものに感じました。 個人的にはITに言及がなかったのは少し残念ですね。 低価格路線の店にユーザの「面」を取られているという問題意識をひしひしと感じましたが、同時にリアル店舗がスマートフォンにユーザの面を取られていることも忘れてはいけないかと思います。
もとの資料はこちらで読めます。
http://www.idc-otsuka.jp/company/ir/tanshin/h-27/h27-2-25.pdf
参考になった資料 https://ksurep.kyoto-su.ac.jp/dspace/bitstream/10965/742/3/KMR_19_61.pdf